2021年3月13日土曜日

モザンビークのお話 (Vol.5) 横田 美保

こんにちは。日増しに暖かくなり、早春の息吹を感じるこの頃です。

皆さんお変わりございませんか。

スタッフ関係

さて、今回は201210月に立ち会った武器アートの製作現場の様子をお伝えします。

その頃、私はえひめグローバルネットワーク(EGN)のモザンビーク事務所長として首都のマプトに駐在しており、前回のブログでお話したように、EGNは市民の手で平和構築を目指すTAEプロジェクト*を支援していました。

*TAEプロジェクトの詳細はひとつ前のブログをご参照ください。⇒【リンク先

このプロジェクトに魅せられた国立民族学博物館(大阪府吹田市)の依頼で、武器アーティストのフィエルさんとケスターさんが大型の武器アートを製作することになりました。その様子を国立民族学博物館の吉田憲司館長が記録するということで、私もその製作プロセスを日々見せて頂くことにしました。

作品のモチーフは、「自転車」と「家族」です。

TAEプロジェクト*のために日本の放置自転車が交換物資として活用されてきたという経緯、また平和な世の中でこそ成立する何気ない日常、平和構築のために前進し続けるというようなメッセージが込められているようです。





まず、銃を切断します。この作品を製作するために合計で100丁以上の銃が使われているそうです。まれに弾薬が込められたままであったり、暴発したりすることもあるので切断のプロセスには細心の注意が必要です。この作業の際に銃口が周囲の人に向かないようになどの注意も必要です。





作品の枠組みを作成し、そこにパーツを一つ一つ溶接していきます。

 





自転車のクランク、サドルを再現。小さいパーツを溶接するのは根気のいる作業です。















自転車の完成。作業が夜中までかかることもありました。

3週間かけて、渾身の作品が完成しました。

 

自転車のハンドルを握った父親が片足を地面につけ、今にも漕ぎ出そうとしている姿で、後部座席には母親と背負われた子どもの姿があります。そこに伴走する犬の姿もあります。

 

完成した作品は、下記のリンクからご覧になれます。日本の多くの方々にもモザンビークの悲しい戦争の歴史を知っていただき、この作品に込められた平和への想いを受け取ってもらえたらと思います。

 


国立民族学博物館所蔵:『いのちの輪だち(Cycle of Life』 2012

フィエル・ドス・サントス/クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)

https://www.minpaku.ac.jp/museum/enews/146otakara


※この作品は、常設展示ではないので、是非見てみたいという方は、同博物館にお問合せ下さい。

 ここまでお読み頂きありがとうございます。次回もお楽しみに!


Vol.6に続く)

 


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2021年2月17日水曜日

モザンビークのお話 (Vol.4) 横田 美保

皆様、こんにちは。

梅が咲き始め、だんだん春の気配がしてきましたね。お元気でお過ごしでしょうか。

さて、前回、モザンビークの内戦後の武装解除、平和構築活動についてお伝えしましたが、今回は武器の平和アートへの再生についてお話します。

<モザンビークの平和アート>

回収した武器を2度と使えないようにするには、通常、溶かして鉄として再利用すると思いますが、モザンビークでは溶鉱炉の不足からそれを断念し、爆破処理する方法が取られました。そして、回収された武器のうち数パーセントは、アーティストの手で平和を訴える『武器アート』として生まれ変わっています。

『空爆が終わり、傘をたたむ人』

(フィエル・ドス・サントス作/えひめグローバルネットワーク所蔵*

 

『武器アート』の特徴は、武器を切断して使用できない状態にしてから、武器であることが視覚的に分かる形でアート作品として再生する点です。そのため、武器の1部であることが私のような素人にも分かります。


作品のモチーフはアーティストによって異なりますが、戦時中は禁じられていた音楽を奏でる様子、喜びを表現するダンス、パン焼き、読書などの日常、動物や爬虫類などの生き物、愛の象徴の薔薇、平和の象徴の鳩など多様です。

モザンビークの首都マプトにある美術館Núcleo De Arteが主な製作場所で、私がマプトに居た当時は5名ほどのアーティストが武器アートを製作していました。特に仲の良かったアーティストが、フィエルさんと、ケスターさんです。 

 

アーティストのフィエル・ドス・サントスさんと彼の作品

アーティストのクリストヴァオ・カニャヴァート(通称ケスター)さんと彼の作品


『武器アート』を製作するアーティストは、自身が子ども兵だった人、親戚・家族が敵味方として戦った悲しい過去を持っている人など、戦争の辛い記憶を抱いている人ばかりです。そのような過去は忘れてしまいたいと考えることもあり、武器を手にすることで戦争の記憶がその度に思い起こされるそうです。しかし、辛い体験があったからこそ、忌まわしい戦争を忘れないように、将来の子ども達に同じ思いをさせないように、作品を通じて平和の尊さを訴えることが使命であると感じているそうです。武器アート製作を通じて、負の感情が昇華して救われているということもあるそうです。

武器アートが世界的に有名になったのは、大英博物館で展示が行われた2002年で、2004年より『Tree of Life(生命の木)』と『Throne of Weapons(武器の玉座)』が常設展示さるようになりました。写真の転載ができないので、是非下記のリンクから作品をご覧ください。

 ◆大英博物館所蔵:『Tree of Life(生命の木)』 2002

同国が負わされた暴力の文化への勝利、兵士や政治家でなく武装していない一般市民(女性、子ども達)の勝利を象徴している。

https://britishmuseum.withgoogle.com/object/tree-of-life

◆大英博物館所蔵:『Throne of Weapons(武器の玉座)』2002

ロシア製の自動小銃AK47、東欧、ポルトガル、北朝鮮の銃などからできている玉座です。

https://britishmuseum.withgoogle.com/object/throne-of-weapons

どんな武器が作品に使用されているかの詳細の分析は以下のリンクでご覧いただけます。モザンビークでは銃を製造していないため、すべて海外から流入した武器です。 リンク:https://bit.ly/3iGnsjO

 *えひめグローバルネットワーク所蔵:武器アート作品一覧(平和教育の教材として、企画平和展の開催のためなどに貸し出しを行っています。詳細はこちら https://mozambique-art.com/

 

ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回は、武器アート作品の製作現場についてお伝えします。

Vol.5に続く)


 


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2021年1月31日日曜日

【SORAKから報告】コロナ禍における現地パートナーの取り組み

女性や少女にコロナによる影響について調査

 

ウガンダにおける2020年のコロナウイルスに関する概要

2020311日、世界保健機構(WHO)により、新型コロナウイルスは世界規模で同時期に発生したパンデミックであり、あらゆる国や国境を越えて大流行している緊急事態と宣言された。多くの国がCOVID-19の感染者を抱え、アフリカ諸国でも2020415日時点で10,000を超える感染者が出た。

ウガンダでは、2020322日にドバイから入国した男性(36歳)が最初の新型コロナウイルス感染者と報告された。それに続き、ウガンダの大統領はウイルスを拡散しないための広範な政策(ウガンダの国境(陸空)の閉鎖、教育機関の休校、公共や私用の運送の禁止、2週間のロックダウン、19時以降の外出禁止)を発表した。

Resident district commissioners(郡の知事)に関しては、感染者(症状が出ている者)を医療センターへ送るための唯一の許可付与者という新たな権限を与えられた。2週間のロックダウンを終えた430日以降、さらに21日間延期され、ロックダウンの延長は、小規模の自営業者やその日暮らしの生活をしている貧困層の収入減に直接影響を及ぼすために大きな動揺を与える決定となった。

420日、ウガンダではコロナウイルス感染者55名、治療中28名、死者0名と報告された。ロックダウンは当初は、数週間延期されるという見込みだったのが、数か月に及んだ。202010月にようやく緩和され、SOP(感染予防対策のガイドライン)に基づき各学校の最終学年の生徒への授業が再開され、お祈りの集会と70名を上限とした会合が許可された。

さらに、COVID-19と並行し、大統領と議会の国内総選挙が実施され、現在の規制では200名以上の集合は禁止されている。202117日、ウガンダでは222名の感染者を抱え、累計の感染者は37,296名となった。死者の累計300名、回復者の累計12,619名(PCRテストを受けた人数:計775,941名)となった。

 

コロナウイルスに対する取り組み

活動1: 社会的弱者である女性や少女とグループディカッションを行い、コロナ禍のロックダウンにより彼女達の生活や人権への影響調査を実施(20207月)

主な調査結果

·   少女のほとんどは学校へ戻る希望を失い、早婚を選択せざるを得ない

·   ロックダウンにより仕事を失った男性による家庭内暴力が増えた

·   学校閉鎖により保護されない状況に置かれた少女へのレイプや強姦による性的暴力が増えた

·   家に滞在する時間が増えたために、望まない妊娠をする女性や少女が増えた

·   コロナ禍による望まない妊娠の結果、望まれない乳児が増えた

·   ロックダウンで営業停止になってしまい、市場で売り子をしていた女性は経済活動を失った


女性や少女にコロナによる影響についてグループディスカッション


女性や少女にコロナによる影響についてグループディスカッション


活動 2: 村々へ出向き、ロックダウンによる在宅中の少女の早婚や妊娠に関する危険性を啓発(20208月)

メモ: 危険性というのは、早婚または望まない妊娠、性行為による感染症の罹患、性的虐待による死亡などのことで、これは犯罪であり収監されるべき刑罰である。特にロックダウン中に学校に行けない少女たちは危険にさらされるため、安全な場所で保護しなければならない。警察は、性的虐待を受けたらすぐに通報すること、少女を危険な場所へ送らず安全に保護すること、家事などで忙しくさせ、クラフトや絵画などをすることでスキルアップさせるように助言した。

ロックダウン中の暴力や性的虐待の危険性をコミュニティに啓発する警察官


活動3: 社会的弱者である女性や少女が食料を確保できるように、豆やトウモロコシの種を配布(SORAKの自己資金)

チバリンガ準群にて、青少年にトウモロコシの種を配布

チバリンガ準群にて、立場の弱い女性には豆を配布


活動4: Peace Corps(米国の平和部隊:日本の青年海外協力隊の米国版)との協力により、 妊娠中または授乳中の母親へ蚊帳の提供(20207月)

 



SORAK
の代表が蚊帳を女性たちに配布している様子

活動5: Untapped Shores International USA inc.からのサポートにより、社会的立場の弱い少女や10代の母親に、水タンクの作成を通じた、水や公衆衛生におけるビジネスのトレーニング

水タンクを作り販売することで水や公衆衛生を促進させる事業・ビジネスである。コロナ禍において特に手洗いは非常に重要であり、手洗いやその他家庭内での水使用へのニーズに応えることにもなる。需要に応じて多くの世帯に水タンクを提供できるように少女たちを訓練した。要望に応じてタンクを作るたびに収入を得ることができるようになり、自分たちの家計を助け、生活費を稼ぐことができるようになった。

貯水槽を作る道具を受け取った水事業トレーニングの受講者たち。

貯水槽を作る女性メンバーにジェンダーに基づく暴力に屈しないよう呼びかける代表

作成中の水タンクを見せる受講者の少女

   

活動6:ムベンデ県のLusalira村にてロックダウン中のごみ収集に参加(2020年7月)


地方のトレーニングセンターからごみ収集に参加した


昨年のコロナ禍で、SORAKの数々の取り組みでした。
2021年は世界中でコロナが収束し、人々が安心して生活できる環境を願います。

2021年1月17日日曜日

【経済的自立支援】マイクロクレジット事業の実施報告_2020年12月

マイクロクレジット(貧困層向けの無担保・小額の融資)

を通した女性や若者の経済的自立支援

本事業は、20201210日に開始し、下記の活動を実施した。

l  12名(女性・男性各6名)の参加者を選抜し、パン作りのトレーニングをした。

l  12名の参加者に2週間の実践研修をするトレーナーを雇用した。参加者は、トレーニング後には自立して仕事ができることを目指す。

<インプット>

 l  小麦粉

 l  調理用の油

 l  砂糖

 l 

 l  べーキングパウダー

 l  その他の材料

 l  ユニフォーム (SORAK代表がベーカリー開始時に身に付けた写真はこちら)

    





















<パン作り>

l  1日あたり75kgの小麦粉を使ってパン作りを行っている。


パンこね機で生地をこねる様子



生地を平らに伸ばしている様子

ドーナツを揚げる前の切り分けた生地

ドーナツを揚げている様子

 出来上がった食パン

販売用のパンとドーナツ

マーケティング(売り子)チームがパンやドーナツを販売しに行く様子


<現時点での成果>

l  これまで、4回のパン製造を行い、700,000UGXの売上げがあった。

l  レモングラスのエッセンシャルオイルを入れたパンとケーキを製造した。レモングラスのフレーバーは、ほとんどの顧客に大好評だったが、中には好まない顧客もいた。

l  パンやケーキを試食した顧客に商品を気に入ってもらえたことから、需要があり、すぐにでも市場に出せる商品であることが確認できた。

l  上述の地域以外でも商品を販売するためにも、利益を出せるように販売量を増加することが必要である。


<改善事項>

l  販路(マーケティング)を拡大するためには徒歩でアクセスできる地域だけでなく、県内のより広範な地域でも販売を広げたい。そのために移動手段の確保が急務である。パンやその他の商品の保管用のコンテナを備え付けた運搬用トラックを用意することが販売拡大には理想的である。

l  利益を出すためには、商品の生産量や生産回数を増やすことが必要である。

l  木を燃料としたオーブンは性能が低いため、それに代わる高品質で大きなオーブンが必要である。

l  工場への水の供給に2013年に敷設された古いポンプのエンジンを使用しているため、交換の必要がある。


※本プロジェクトは皆様の寄付などを含む自己資金を活用しています。



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