2021年8月14日土曜日

【経済的自立支援】第2四半期報告(2021年4月~2021年6月)

太陽熱により発酵させているドーナツ

 

はじめに

本事業の第2四半期の活動報告である。最初に、事業を確実に継続し、持続可能にするために、新たな学びや経験を積むと同時に、随時変更や調整していくことが重要である。

この報告期間、ドーナツやパンの生産は、ルーティ―ン活動に限られたが、さらなる商品開発や市場拡大に乗り出している。


活動概要

1.    中古車の修理とブランディング:本期間中、SORAK所有の小型車は不調があったが、商品販売に向けて修理をした。商品の運搬のために後部座席を取り除き、パンのステッカーを作成し車に貼り付けた。第一の狙いとして競合他社と差をつけること、第二に購入者の目を引くことで、我々の商品の販路開拓をすることである。

 

ブランド化した販売車


2.   市場拡大本期間中に、前期中に開拓した我々の拠点地域および隣接した2準群よりさらに広範囲に市場を広げた。それはKyegeggwa郡にあるHapuyo準群のKyakaIIKasule難民キャンプと、Gomba郡にあるMaddu準群である。

3.   ディーゼルエンジンの設置: 前期ではUmemeという一番大きな電力会社が供給する電気を使用していたが、電気の配給が安定せず、しかも高額であった。そこでディーゼルエンジンの発電機を購入したところ、継続して作動するため、自分たちの使用したいタイミングで働けるようになった。

新たに購入したディーゼルエンジンでミキサーを作動         SORAKパンのサンプルステッカー

4.   商品開発: 6月の最終週に新商品を開発した。消費者の要望に基づいて、クッキーと小さなサイズの地元でダディと呼ばれるドーナツである

5.   若者のトレーニングさらに男性5名と女性3名の若者を受け入れ、パン作りのトレーニングを行った。その間、計3名(男性2名と女性1名)の参加者が自身でパンのビジネスを始めるために去った。


主な成果

今期の事業において貢献できたこと。

1.    販売対象の地域やコミュニティにおける食料安全保障に貢献できた。我々の商品を食料品として利用する機会を購入者に提供した。

2.    若者に技術提供をした。彼等はパン作りやそれに関連する作業を学んだことにより、この経験を活かして自身でビジネスを始めるチャンスを得ることができた。

3.    若者に雇用の機会を提供した。現時点では販売関連スタッフとしてバイク販売員2名、軽トラックでの販売2名の計4名を雇用した。


課題

今期の事業における課題

1.    コロナウイルスの感染再拡大と2回目のロックダウン: ウガンダでは2021610日から52日間、2回目のロックダウンにより経済活動が減少し、その影響により販売が低迷、生産に非常に大きなダメージを与えた。しかし、生産を継続するために、我々は様々な可能性を考慮しながら活動を継続した。また売上の減少を補うために多くの人々が居住していうるKyakallという難民キャンプにまで市場を広げた。1日平均200キログラムの小麦粉を使用した商品の販売により、約333ドル/日の総売上高があるため、財政状況は安定している。ロックダウンが終われば2倍の売上を期待しているが、そのためにミキサーなどのさらなる機械の導入も必要となってくる。

2.    ドーナツ生産拡大に適さない天候: ドーナツの生産には35度以上の一定の温度を保たなければならない。現時点では太陽光に頼っているため、上手く発酵できず小さなサイズの商品しか生産できずに購入者をがっかりさせてしまうことがある。

3.    若者による怠慢と浪費: 若者の中には怠慢で、工場の仕事として要求されることに応えられていない者がいる。材料を計量することに注意を払わず、商品にならないひどい物を生産することがあり、そういう時は油や砂糖など高額な材料が無駄になってしまう。

4.    参加者による生産品の窃盗: 管理者の不在時に生産品を盗む参加者がおり、このような行為はビジネスを台無しにすると危惧している。


課題に対する取り組み

様々な課題を軽減するために、SORAKは以下の事を実施した。

1.    保健省が発行しているStandard Operating Procedures(標準作業手順書)に基づき、参加者やスタッフがコロナウイルスに感染しないように器具の消毒や手洗いを徹底した。

2.    ロックダウン中は、多くの普通車は交通を制限されるが、貨物車として車をブランディングしたことにより、人々に必要な食料を配給する車として認められ自由に移動ができた。

3.    まき釜オーブンから発生する熱を利用し、何とか生産をしたが、適切な数を生産するまでには至らなかった。この課題への取り組みとして、寒い天候に備えて室内暖房機を購入する予定である。また、寒い気候下では、熱がなくても生産できるクッキーやパンの生産をし、暖かい気候下ではドーナツを作ることに取り組むことである。 

4.    温暖気候時はより多く労働してもらい、寒い時期の労働は減らすようにスタッフに掛け合う。

5.    天候に左右されない商品を生産する。

6.    怠慢な参加者は有能な若者と交代させる。また各スタッフの日常業務が計画通りに実施しているか確認するようにする。

7.    生産品を盗んだ参加者は辞めさせるなどの処分をする。もし資金があれば、工場のフェンスを作り出入口を1つにし、出入りする者を監視するガードマンを雇用する。


今後の提案

1.    自動で焼いたり、熱したりできる性能の良い機械を導入すること。

2.    時間通りに商品を市場に配給できるような交通手段を得ること。

3.    ドーナツを素早く発酵させるように暖房室を建てること。

4.    市場の維持と拡大をすること。

太陽熱を利用しドーナツを発酵させている  発酵したドーナツを揚げている





女性のパン作りの参加者          2021年6月に導入した新商品







切ったり丸めたりしている様子








次のステップ:

次のプランは、本事業を継続していく中で学んだ経験や教訓に基づき決定する。20216月に開始すると見込んでいたマイクロクレジット活動は、予定外のロックダウンによる活動の遅れなどがあり、ビジネスが軌道に乗るまでは実施する段階ではないと考えている。 

マイクロクレジットの開始はすべての活動が運営でき、商品が安定した生産ができるようになってから実施すべきと考えており、今年2021年の年末までに達成できるのではないかと考えている。




過去の報告書一覧はこちらです↓↓
「マイクロクレジットを通した女性や若者の経済的自立支援」事業報告書一覧


※本プロジェクトは皆様の寄付などを含む自己資金を活用しています。



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2021年6月6日日曜日

【経済的自立支援】第1四半期報告(2020年12月~2021年3月)

 


背景

新型コロナウイルス感染によるロックダウンにより失業した若者や女性たちの生活への経済的なダメージを緩和し、経済的自立を支援することを目的に、SORAK はパン製造・販売を始め、若者や女性にスキルと雇用の機会を提供することにした。SORAK の所有地(レモングラスエッセンシャルオイルの蒸留前にレモングラスの草を寝かせておく場所)を活用し、さらにパンのフレーバーとしてこれまでの環境保全事業で生産したレモングラスのエッセンシャルオイルを活用した。

SORAK はパン製造の工程に必要な以下の機械を購入し、それらを修繕して使用した。

-ミキサー、パンの鋳型、スライサー、燃料節約型の薪を使う石オーブン(3 個)

その他の支出は、フライパン、トレイ、電子計量器、作業テーブル、木の棚まき置き、また首都カンパラからパンの包装材をデザイン・購入した。

初年度は若者や女性へのパン作りや販売のトレーニングに力を入れ、次年度に彼等に融資を付与する活動に移行する予定である。

ミキサー、作業テーブル、製造したパンを格納するトレイ

蒸し器、薪オーブン(建設中)

揚げるのに使用する省エネのストーブ、薪オーブン(完成形)と蒸し器、建設中のパン工場


パンの鋳型、初期(2020 年 12 月)に設置したオーブンを取り替えた新しいオーブン














パン作りの工程に必要な最低限の機器を整えたのは良いものの、SORAK は運用費が足りないという課題に直面し、パンやドーナツ作りの材料を購入する資金が必要であった。

そこで、Global Bridge Network(GBN)からローンという形で 2 年間 5000 ドルを借入することになった。

この借入金は運用費(トレーニング費、砂糖、塩などの調味料や小麦や調理油などパン作りに必要な材料)として活用する。

パンなどの商品開発は 2020 年 12 月にスタートし、以下の形で進めている。


活動概要

活動 1: 若者・女性のパン作りトレーニング

日時: 2020 年 12 月(2 週間)

活動内容:

ウガンダの首都・カンパラから腕の良いトレーナーに来てもらいトレーニングを実施した。トレーナーは SORAK の貧困の状態にある若者にパン、ケーキ、ドーナツやその他の菓子類の作り方を指導した。

若者 12 名(男女半数名ずつ)は 2 週間の実施研修にて、主な材料である小麦 1000 キロ、クッキングオイル 500 リットルを使用してパンを製造した。

さらに市場調査を兼ねて近隣のコミュニティへ生産したパンを持っていき試食してもらったところ、小さなショップ経営者を含む 200 世帯が関心を持ってくれた。

トレーニング期間中に、最初に設置したオーブンを解体し、スチールと粘土で作られた物に取り替えた。最初のオーブンは小さて品質が悪く、パンの 90%が焦げてしまったためである。

最初の品質の悪いオーブン               取り替えた新オーブンとドーナツ






主な成果:

-若者・女性はパン作りの技術(材料を計って混ぜる方法、機械の使い方、パンのこね方、焼いたり揚げたりする方法など)を習得した。

-若者・女性は市場調査や営業の方法を習得した。

-最も素晴らしい成果は、若者が SORAK のオリジナルブランドを開発し、すでに市場にあるパンに引けを取らない素晴らしい出来栄えの商品としてのパンを生産出来たことである。

パン・ドーナツの生産過程:材料の準備、計量、ミキサーで混ぜ、こねて型取り、切って完成

活動: パン・ドーナツの生産

日時: 2021 年 1 月

内容:

努力の甲斐あって、2021 年 1 月 3 日以降から SORAK のパンは市場に出せる生産品になった。現在はパンとドーナツを商品として生産している。1 キロ、500 グラム、120 グラム、40 グラムと様々なサイズ、長方形、楕円形、丸型などの様々な形のパンを生産した。

SORAK はパン生産者として若者 9 名をフルタイムで雇用し、週に 6 ドルほどの給与を支払っている。

500 グラムの丸いパンやドーナツの生産過程

生産とインプット:

現時点での生産過程にて使用する材料として、小麦 125 キロ、オイル 20 リットルを毎日使っている。

-1 キログラムの小麦0.75 ドルx125 キログラム(1 日の使用量)=合計 93.75 ドル

-オイル 20 リットル=35.8 ドル

上記の主な 2 つの原材料から生産できる量は以下の通り。

-小麦 100 キログラムのドーナツ生産量は 120 ダース分(1 ダースはドーナツ 12 個)

-小麦 25 キログラムのパンの生産量は 24.5 ダース(1 ダースはパン 12 個)

-若者 9 名雇用にて 1 週間に掛かる給与は 56.9 ドル


主な成果:

-SORKA 産のパンは既に市場に出ているパンに引けを取らず、多くの人々に好まれた。

-SORAK 産のパンの種類は以下である。

500 グラムの円形のパン、100 グラムの小さなパンとドーナツ、1000 グラムまたは 500 グラムの食パン

ドーナツを揚げている様子、100 グラムの小サイズパンのパッケージ、食パン


活動 3: 日々のマーケティング活動と顧客へ販売

日時: 2020 年 12 月~2021 年 3 月

内容:

バイクタクシーを 2 名雇い、SORAK のマーケティングチーム(販売係)により日々販売した。

経費:

2 名のバイクタクシーを使用し、117.3 ドルに値する生産品を販売した。

-1日平均 30 キロくらい移動して販売した。

-バイクタクシーのドライバー1 名に掛かる燃料費が 1 日 8.3 ドル(燃料代含む)、ドライバーへの支払いが

16.6 ドルであった。


販売先(顧客)のカテゴリー

1- 個人宅

2- 小売店

3- レストラン

4- 学校の食堂

5- 農村地の卸売店

6- ソフトドリンク売り場


主な成果:

日次にて

- 120 ダース(1 ダース 1.3 ドル)のドーナツの販売にて、卸売価格は 166.6 ドル(粗利益)

-24.5 ダース(1 ダース 1.3 ドル)のパンの販売にて 34 ドルの利益

-1日の総売上高 200.6 ドル

しかし、上記のほとんどは経費で消えてしまう。 例えば、材料費、生産費、販売費など、売上から捻出することになる。

徒歩やバイクでパンやドーナツを販売するマーケティングチームや配送からもどってきたバイク


 SORAK の戦略的目的と本事業の成果と変化

本事業は、SORAK のテーマである若者と女性のエンパワーメント、特に 2019 年に策定した SORAK の中長期目標 5.2 にある「女性と若者の収入向上」に呼応するものである。

事業期間中の成果として、本マイクロクレジット事業は、パン作りや販売員として雇用した合計 9 名の若者の収入創出に貢献できた。また、販売に関わるバイクタクシー2 名の収入創出にも貢献している。

本事業において見られた変化として、SORAK 産のパンへの需要が増えていることである。パンとドーナツはSORAK オリジナルのレモングラスのフレーバーがあり、パン市場において他社と競合している。


課題と提案

主な課題・問題

課題に対する提案

提案に対する結果

-不十分な生産設備。市場の需要に対して少量の生産しかしていない。機械、輸送手段、材料を備蓄しておくための資金がない。

 

-電気代が高く、供給が不安定。電気会社は常に不正をしており、電力配給が安定しない。

 

 -雇用した若者に十分に支払う給与が確保できない。低賃金で足りないと、週の給与は少なくとも11ドルを要求されている。

 

-材料の値段が常に不安定で値上りがある。最初は小麦1キログラム0.72ドルだったが、2か月間で0.76ドルに値上がりした。

-資金調達する。

 

 

 

 -高額な電気代や不安定な供給対応するためディーゼルエンジンを使用したミキサーを購入する

 

 -生産力を上げることができれば、雇用者により仕事を与え、生産・販売を増やせば、賃金を上げることができる。

 

-将来的に資金調達して、材料の大量まとめ買いをすることで、材料費の値上がりの影響を抑え、収益を最大化する。

SORAKはスタッフと今後のプラン、機器の購入、運搬の手段の確保、賃金の値上げ等に関してどうやって資金調達するかについて話し合っている。 


次のステップ

マイクロクレジットとしての活動は実施計画の後半で実行する。後にローンを返済するために、まずはパン作りと販売を強化するために、若者を雇用し賃金を払っている。

パンの生産と販売はローン返済のための一つの手段であり、SORAK は若者に融資をしてそこから収益を上げることを計画している。それゆえ、まずはパンのビジネスを強化することから始め、若者にクレジットを渡せるように

なるまで拡大する。SORAK は若者や女性から融資を付与してから返済してもらうまでにかかる時間やプロセスを考慮し、今はより高品質と認められるパンを生産し、 財政基盤を強化し、長期にわたり彼らを支援できるようにすることが重要であると考えている。



報告書一覧はこちらです↓↓

「マイクロクレジットを通した女性や若者の経済的自立支援」事業報告書一覧


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2021年5月8日土曜日

ウガンダ共和国における「生理で学校に行けなくなる女子学生の教育環境改善事業」

JICAの草の根協力支援型(2020年度第2回)として採択されました!*



*事業の開始は2021年度末から2021年度初旬の見込みです。 

事業の背景

<生理が原因で学校を中退?!

ウガンダをはじめとした途上国では、子どもたちが様々な原因で学校を中退してしまうという問題があります。授業料を払えない、学校が家から遠いなど、理由は様々です。その中でも、実は生理が原因で女子生徒が中退してしまうという問題があります。加えて生理について言及することがタブーという文化的背景があり、青年期の男女が学校や家庭で生理について教わらず、月経に関する正しい知識、衛生・性教育が不足していることも深刻な問題です。

 GBN は、NPO 法人設立前に「生理用品配布事業」を実施しました。貧困のため生理用ナプキンを購入できず、手元にある古着など不衛生なものを代用することによる感染、洋服などに漏れてしまったところを見た男子生徒にからかわれる等、生理が原因で学校を休学、中退してしまう女子生徒がたくさんいるという事実を知ったからです。そこで、1年間洗って使える布ナプキンを配布し、それが女子生徒の就学状況の改善にどれほどの効果を与えるか測るべく、調査を行いました。

 ◆調査報告書はこちらです。

 布ナプキンプロジェクト調査結果2015

 その結果、布ナプキン配布後の女子生徒の学校の出席率、成績などの向上が見られ、中退した 女子生徒も復学することが出来たのです。生理期間中に学校を休むと、1か月に長くて1週間、1学期の期間中に合計3週間近く休むことになり、学校の出席率や成績に大きく影響します。その結果、学校を中退してしまい、学校を出ていないことにより十分な収入を得られる職業に就く機会も逃してしまいます。また、男女ともに生理に関する正しい知識、衛生・性教育の不足、ジェンダー意識の低さも大きな原因であることが分かりました。


20172019年「生理で学校に行けなくなる女子学生の教育環境改善事業」>

その後、20172019年の3年間、Lush Japan様の助成でウガンダのムベンデ県にある現地NGOのSORAK Development Agency *協働し、生理による女子生徒の中退防止を目標に、布ナプキンの作成指導、衛生・性教育、ジェンダー啓発活動を実施し、どのような効果が得られるかを測るインパクト調査を実施しました。

*SORAKhttps://www.facebook.com/Sorak-Development-Agency-314375665249241/


 ◆各報告書はこちらです。

リンク:http://globalbridgenetwork-jp.blogspot.com/2020/03/blog-post.html

 

<JICAのプロジェクトとして、これまでの活動を発展させます>

上記の事業の実施で、布ナプキン作成トレーニングの拡充、生理に対する正しい知識、衛生・性教育の普及、ジェンダー意識の啓発などのさらなる効果的なサポートを実施し、ウガンダの女子生徒の就学率向上に貢献することが必要であると認識しました。

 また、教員による生理の問題に対処する能力の欠如、また多くの学校に女子トイレ、汚れた衣類を洗う洗面所、着替えの場所などの設備が不足していることも課題です。また一般的に、使い捨ての生理用ナプキンを購入できない女性の多くは、何度も使用できる生理用布ナプキンの存在自体を知らないことが多いです。貧困家庭の女子が学校を退学してしまうと、児童労働・性産業への従事、若年の結婚・妊娠などに陥ってしまう可能性が高まります。女子が将来、社会的・経済的に脆弱な立場に陥らないためにも、生理中も安心して学校に通学し、基礎教育を完了できる環境をつくることが必要であると考え、本事業を実施します。

JICAの掲載ページ

草の根協力支援型 | 市民参加 | 事業・プロジェクト - JICA

 

本ブログにて、事業の進捗をお伝えしていきますので、お楽しみに!


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2021年3月13日土曜日

モザンビークのお話 (Vol.5) 横田 美保

こんにちは。日増しに暖かくなり、早春の息吹を感じるこの頃です。

皆さんお変わりございませんか。

スタッフ関係

さて、今回は201210月に立ち会った武器アートの製作現場の様子をお伝えします。

その頃、私はえひめグローバルネットワーク(EGN)のモザンビーク事務所長として首都のマプトに駐在しており、前回のブログでお話したように、EGNは市民の手で平和構築を目指すTAEプロジェクト*を支援していました。

*TAEプロジェクトの詳細はひとつ前のブログをご参照ください。⇒【リンク先

このプロジェクトに魅せられた国立民族学博物館(大阪府吹田市)の依頼で、武器アーティストのフィエルさんとケスターさんが大型の武器アートを製作することになりました。その様子を国立民族学博物館の吉田憲司館長が記録するということで、私もその製作プロセスを日々見せて頂くことにしました。

作品のモチーフは、「自転車」と「家族」です。

TAEプロジェクト*のために日本の放置自転車が交換物資として活用されてきたという経緯、また平和な世の中でこそ成立する何気ない日常、平和構築のために前進し続けるというようなメッセージが込められているようです。





まず、銃を切断します。この作品を製作するために合計で100丁以上の銃が使われているそうです。まれに弾薬が込められたままであったり、暴発したりすることもあるので切断のプロセスには細心の注意が必要です。この作業の際に銃口が周囲の人に向かないようになどの注意も必要です。





作品の枠組みを作成し、そこにパーツを一つ一つ溶接していきます。

 





自転車のクランク、サドルを再現。小さいパーツを溶接するのは根気のいる作業です。















自転車の完成。作業が夜中までかかることもありました。

3週間かけて、渾身の作品が完成しました。

 

自転車のハンドルを握った父親が片足を地面につけ、今にも漕ぎ出そうとしている姿で、後部座席には母親と背負われた子どもの姿があります。そこに伴走する犬の姿もあります。

 

完成した作品は、下記のリンクからご覧になれます。日本の多くの方々にもモザンビークの悲しい戦争の歴史を知っていただき、この作品に込められた平和への想いを受け取ってもらえたらと思います。

 


国立民族学博物館所蔵:『いのちの輪だち(Cycle of Life』 2012

フィエル・ドス・サントス/クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)

https://www.minpaku.ac.jp/museum/enews/146otakara


※この作品は、常設展示ではないので、是非見てみたいという方は、同博物館にお問合せ下さい。

 ここまでお読み頂きありがとうございます。次回もお楽しみに!


Vol.6に続く)

 


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2021年2月17日水曜日

モザンビークのお話 (Vol.4) 横田 美保

皆様、こんにちは。

梅が咲き始め、だんだん春の気配がしてきましたね。お元気でお過ごしでしょうか。

さて、前回、モザンビークの内戦後の武装解除、平和構築活動についてお伝えしましたが、今回は武器の平和アートへの再生についてお話します。

<モザンビークの平和アート>

回収した武器を2度と使えないようにするには、通常、溶かして鉄として再利用すると思いますが、モザンビークでは溶鉱炉の不足からそれを断念し、爆破処理する方法が取られました。そして、回収された武器のうち数パーセントは、アーティストの手で平和を訴える『武器アート』として生まれ変わっています。

『空爆が終わり、傘をたたむ人』

(フィエル・ドス・サントス作/えひめグローバルネットワーク所蔵*

 

『武器アート』の特徴は、武器を切断して使用できない状態にしてから、武器であることが視覚的に分かる形でアート作品として再生する点です。そのため、武器の1部であることが私のような素人にも分かります。


作品のモチーフはアーティストによって異なりますが、戦時中は禁じられていた音楽を奏でる様子、喜びを表現するダンス、パン焼き、読書などの日常、動物や爬虫類などの生き物、愛の象徴の薔薇、平和の象徴の鳩など多様です。

モザンビークの首都マプトにある美術館Núcleo De Arteが主な製作場所で、私がマプトに居た当時は5名ほどのアーティストが武器アートを製作していました。特に仲の良かったアーティストが、フィエルさんと、ケスターさんです。 

 

アーティストのフィエル・ドス・サントスさんと彼の作品

アーティストのクリストヴァオ・カニャヴァート(通称ケスター)さんと彼の作品


『武器アート』を製作するアーティストは、自身が子ども兵だった人、親戚・家族が敵味方として戦った悲しい過去を持っている人など、戦争の辛い記憶を抱いている人ばかりです。そのような過去は忘れてしまいたいと考えることもあり、武器を手にすることで戦争の記憶がその度に思い起こされるそうです。しかし、辛い体験があったからこそ、忌まわしい戦争を忘れないように、将来の子ども達に同じ思いをさせないように、作品を通じて平和の尊さを訴えることが使命であると感じているそうです。武器アート製作を通じて、負の感情が昇華して救われているということもあるそうです。

武器アートが世界的に有名になったのは、大英博物館で展示が行われた2002年で、2004年より『Tree of Life(生命の木)』と『Throne of Weapons(武器の玉座)』が常設展示さるようになりました。写真の転載ができないので、是非下記のリンクから作品をご覧ください。

 ◆大英博物館所蔵:『Tree of Life(生命の木)』 2002

同国が負わされた暴力の文化への勝利、兵士や政治家でなく武装していない一般市民(女性、子ども達)の勝利を象徴している。

https://britishmuseum.withgoogle.com/object/tree-of-life

◆大英博物館所蔵:『Throne of Weapons(武器の玉座)』2002

ロシア製の自動小銃AK47、東欧、ポルトガル、北朝鮮の銃などからできている玉座です。

https://britishmuseum.withgoogle.com/object/throne-of-weapons

どんな武器が作品に使用されているかの詳細の分析は以下のリンクでご覧いただけます。モザンビークでは銃を製造していないため、すべて海外から流入した武器です。 リンク:https://bit.ly/3iGnsjO

 *えひめグローバルネットワーク所蔵:武器アート作品一覧(平和教育の教材として、企画平和展の開催のためなどに貸し出しを行っています。詳細はこちら https://mozambique-art.com/

 

ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回は、武器アート作品の製作現場についてお伝えします。

Vol.5に続く)


 


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