2021年2月17日水曜日

モザンビークのお話 (Vol.4) 横田 美保

皆様、こんにちは。

梅が咲き始め、だんだん春の気配がしてきましたね。お元気でお過ごしでしょうか。

さて、前回、モザンビークの内戦後の武装解除、平和構築活動についてお伝えしましたが、今回は武器の平和アートへの再生についてお話します。

<モザンビークの平和アート>

回収した武器を2度と使えないようにするには、通常、溶かして鉄として再利用すると思いますが、モザンビークでは溶鉱炉の不足からそれを断念し、爆破処理する方法が取られました。そして、回収された武器のうち数パーセントは、アーティストの手で平和を訴える『武器アート』として生まれ変わっています。

『空爆が終わり、傘をたたむ人』

(フィエル・ドス・サントス作/えひめグローバルネットワーク所蔵*

 

『武器アート』の特徴は、武器を切断して使用できない状態にしてから、武器であることが視覚的に分かる形でアート作品として再生する点です。そのため、武器の1部であることが私のような素人にも分かります。


作品のモチーフはアーティストによって異なりますが、戦時中は禁じられていた音楽を奏でる様子、喜びを表現するダンス、パン焼き、読書などの日常、動物や爬虫類などの生き物、愛の象徴の薔薇、平和の象徴の鳩など多様です。

モザンビークの首都マプトにある美術館Núcleo De Arteが主な製作場所で、私がマプトに居た当時は5名ほどのアーティストが武器アートを製作していました。特に仲の良かったアーティストが、フィエルさんと、ケスターさんです。 

 

アーティストのフィエル・ドス・サントスさんと彼の作品

アーティストのクリストヴァオ・カニャヴァート(通称ケスター)さんと彼の作品


『武器アート』を製作するアーティストは、自身が子ども兵だった人、親戚・家族が敵味方として戦った悲しい過去を持っている人など、戦争の辛い記憶を抱いている人ばかりです。そのような過去は忘れてしまいたいと考えることもあり、武器を手にすることで戦争の記憶がその度に思い起こされるそうです。しかし、辛い体験があったからこそ、忌まわしい戦争を忘れないように、将来の子ども達に同じ思いをさせないように、作品を通じて平和の尊さを訴えることが使命であると感じているそうです。武器アート製作を通じて、負の感情が昇華して救われているということもあるそうです。

武器アートが世界的に有名になったのは、大英博物館で展示が行われた2002年で、2004年より『Tree of Life(生命の木)』と『Throne of Weapons(武器の玉座)』が常設展示さるようになりました。写真の転載ができないので、是非下記のリンクから作品をご覧ください。

 ◆大英博物館所蔵:『Tree of Life(生命の木)』 2002

同国が負わされた暴力の文化への勝利、兵士や政治家でなく武装していない一般市民(女性、子ども達)の勝利を象徴している。

https://britishmuseum.withgoogle.com/object/tree-of-life

◆大英博物館所蔵:『Throne of Weapons(武器の玉座)』2002

ロシア製の自動小銃AK47、東欧、ポルトガル、北朝鮮の銃などからできている玉座です。

https://britishmuseum.withgoogle.com/object/throne-of-weapons

どんな武器が作品に使用されているかの詳細の分析は以下のリンクでご覧いただけます。モザンビークでは銃を製造していないため、すべて海外から流入した武器です。 リンク:https://bit.ly/3iGnsjO

 *えひめグローバルネットワーク所蔵:武器アート作品一覧(平和教育の教材として、企画平和展の開催のためなどに貸し出しを行っています。詳細はこちら https://mozambique-art.com/

 

ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回は、武器アート作品の製作現場についてお伝えします。

Vol.5に続く)


 


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